あきらめることについて/「言語化の魔力」を読んで

もう、2年も前になるだろうか。

私は、知人から暗号資産への投資を勧められた。

投資のしくみがどうであるかとか、どのくらい儲かる算段であったかとか、そのようなことはここで書くべきことではないし、思い出したくもない。

結果的に、その投資は詐欺案件だった。

突っ込んだお金は1千万円以上だが、すべて消えた。

被害にあったのは私だけではなく、被害者の会も結成された。

弁護士に依頼して、出資金を取り戻すための活動もしているようだ。

しかし、私はその会には参加しなかった。

一時的な金銭欲にかられた自分を責めることもしなかったし、投資を勧めて知人を責めることもしなかった。

ましてや、詐欺を働いた「証券会社」を責めることもしなかった。

つまり、あきらめたのだ。

誰かの責任を追求したところでどうにもならないし、自分の至らなさ、強欲さ、浅はかさ、それらを責めたところで、お金が戻ってくるわけでもない。

老後は、退職金と公的年金と、幸いにも手を付けなかったいくばくかの貯蓄で生きていくことを決意した。

そうしたら、1千万円ものお金を失ったことに対する悩みも消えた。

自分にはどうにもならないことは、思い切って手放すしかないのだ。

ベストセラー作家であり精神科医の樺沢紫苑先生の新刊「言語化の魔力」が11月9日に発売された。

表紙や帯には

言葉にすれば「悩み」は消える

究極の「悩み」解消本

とのコピーが踊っている。

苦しい自分の想い、辛い自分の気持ちを頭の中でグルグル反芻させるのではなく、それらを言葉にして表現することによって、

悩みが解消され、心が癒やされると、樺沢先生は説く。

私は、この本を読んだときには、すでにお金に関する先の悩みは消えていたが、あらためて当時のことを振り返ってみることで、心がスッキリした。それだけでも「言語化の魔力」を実感することができた。

そして、私がとった「あきらめる」という行動が、実は悩みを消す究極の方法であることも知った。

多額のお金を失ったけど、人生を投げ出したりはしない。

過去の行動は消えないし、誰かを責めても失ったお金は戻ってこない。

それらは、自分のコントロールできる範囲外のことだ。

手元の資産がすべて消えたわけでないし、健康で働き続けられれば公的年金受給開始までは生活費に困ることもないだろう。

自分にできることは、定年退職までのあと11年4か月、健康を害して働けなくなることのないように、心身を整えること。

そして、定年の後も組織に頼らずに何かの仕事を続けられるよう、今のうちから準備をしておくことだ。

今はたいした悩みはなくても、これから先、悩みに直面することは必ずあるだろう。

健康面かもしれないし、人間関係かもしれないし、お金のことかもしれない。

そんなときは、心の中の気持ちや想いを、言葉にしよう。

誰かに話して、紙に書き連ね、そして、インターネット上にとどめておこう。

自分には、自分を癒すことのできる力があるのだから。

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