「アウトプット大全」、「インプット大全」が合計70万部を超える大ベストセラーとなった精神科医の樺沢紫苑先生が、7月1日に新刊を世に送り出しました。
その本のタイトルは「精神科医が教えるストレスフリー超大全」といいます。
「ストレスフリー」という言葉はあまり耳にしませんが、日常生活のストレスをゼロにするという意味ではありません。
昼間の仕事で高いストレスを受けているような人でも、夜のうちにしっかりリセットして、翌朝にはストレスがすっきり解消されている人のことを、樺沢先生は「ストレスフリーな人」と定義しています。
つまり、人々がストレスを感じる原因となっている悩みや不安をどのように解消していったらいいかについて余す所なく書かれているのが、この「ストレスフリー超大全」というわけです。
実は、この本の発売前に、樺沢先生のブログで目次が公開されていました。
目次を見てみると、「人間関係」「プライベート」「仕事」「健康」「メンタル」について、私達が日頃抱えている問題や不安への対処法について幅広く書かれた本であることがわかります。
その中で、ファイナンシャルプランナーの資格を持つ私が強く興味を持ったのは、なんと言っても『「お金の不安」を取り除く方法』という項目です。
精神科医の樺沢先生がどのような切り口から「お金の不安」の解消に取り組んでいくのか、発売前からとても楽しみでした。
6月23日に開かれた出版記念講演会に参加した私は、発売日より早く「ストレスフリー超大全」を手にすることができました。目次から想像していた以上に重厚な本でした。
本のをすっ飛ばして『「お金の不安」を解消する方法』の項目を真っ先に読みたかったのですが、まずは序章の『すべてのベースとなる「解決法」』から読み始めることにします。
そこには、一番最初の基本として「不安を行動で取り除く」ことが書かれていました。自分で行動しない限りどんな問題も絶対に解決しないと樺沢先生は説きます。
不安とは、実は苦しみから自分を救ってくれるエネルギーであり、そのエネルギーを使って行動すれば確実に不安は減っていくというのです。
樺沢先生は、私たち読者にこう語りかけます。
- まずは、自分で本を読んで調べてみましょう。
- 本を読んでもよくわからなければ、他の人に相談してみましょう。周りに詳しい人がいなければ、自分の住んでいる市町村の相談係に電話してみましょう。
- そして、何をすべきかわかったら、実際に行動してみましょう。
これはすべての不安の解消に共通することですが、「お金の不安」への対処法の基本でもあると感じました。
「年金だけでは老後資金が2000万円も不足するらしい。どうしよう」
「40歳にもなって、貯金がまったくない。どうしよう」
などと、頭を抱えるばかりでは何も解決せず、まずは初めの一歩を踏み出す必要があるのです。
最初の数ページを読んだだけで、お金への不安も解消されそうな勢いですが、さらに具体的な解決法を知るために、いよいよ本編3章第10項の『「お金の不安」を取り除く方法』を読んでいくことにします。
この章で樺沢先生は、
「お金持ちになるためには、起業か投資しかない」
という重要な事実(ファクト)を私たち読者に突きつけます。
もちろん、お金持ちになれば必ず幸せになれるかというと、そのようなことはありません。この章も「お金」と「幸福」は比例しないというファクトがちゃんと書かれています。
ただ、本業だけしか収入がなく、しかもその収入が少ないことがお金への不安を生んでいる原因だとしたら、やらなければいけないことは、「お金持ち」にはならないまでも、本業での収入を増やすか、あるいは本業以外の収入を増やすことしかありません。これは、「ストレスフリー超大全」を読むまでもなく、当然のことと言えます。
本業での収入を増やす方法は、勤務先に認められて昇任昇給を勝ち取ることであり、そのための努力を怠らないことです。
また、本業以外の収入を増やす方法としては、究極的には起業することであり、まうはその前段となる副業を始めることです。
これらについては「ストレスフリー超大全」にも具体的に書かれていますが、この章では投資に絞り込んで書かれていますので、私もそれにならうことにします。
とは言え、投資に絞り込んで書かれているはずこの章でも、金融商品への投資については「小さい投資からはじめる」ということしか書かれていません。
ハイリスク・ハイリターンの商品に手を出さず、少額からスタートして投資について学ぶというのが正攻法だというのです。
確かに年間100万円を積み立てることにして、年利回り10%の金融商品で複利運用すれば約26年で1億円に到達します(所得税は考慮しません)。年利回り10%を安定して叩き出す商品を探すのは困難ではありますが、決して不可能な数字ではありません。
しかし、これだけで終わらないところが、普通のマネー本との違いであり、樺沢先生の真骨頂です。
「10年で10倍のリターン」つまり年利回り25%強どころか、人によってはそれ以上稼げる投資が世の中には存在するというのです。
それは「自己投資」という名の投資です。
樺沢先生は25年間の自己投資、つまり毎月20冊以上本を読み、月に10本以上映画を観て、年に数回海外旅行に出かけたりしてきたことが、今の活動のベースになっているといいます。そして、樺沢先生は25年間の自己投資額の100倍以上のリターンを得ているそうです。
25年間で100倍のリターンということは、年利回りに換算すると30%を超えます(ただし、毎年の自己投資額が一定であると仮定した場合)。年利30%の金融商品なんて、まずお目にかかることはありません。
一方、目の前の100万円を100年間銀行の定期預金に預けても、1万円ちょっとしか増えません。言い方を変えれば、何の行動も起こさないで100万円を大事に抱えているだけの人は、100年間でたった1万円の価値しか生み出さないないのです。
これならば、健康のためにスポーツジムに通ったり、人間関係を深めるために交流会に参加したり、見聞を広めるために海外旅行に出かけたりといった自己投資をしたほうが、100倍のリターンとまではいかないかもしれませんし、金銭的換算もできないかもしれませんが、はるかに自分を豊かにしてくれると思うのです。
かく言う私にも、自己投資によって自分が豊かになった経験があります。
2年半前に、とある投資家の方がご自身のブログ上で、香港で行われるオフ会の参加者を募集しているのを目にしました。幸運にもそのオフ会に参加することができた私は、主催者の方の仲間の輪に加えていただきました。
そして、その後もオフ会が香港で開催されるごとに参加し続け、多くの投資家の仲間を得ることができました。さらには、投資商品の情報をいただくだけでなく、実際に投資を行い収入を得ることもできました。
香港への往復の飛行機代は5万円程度ですが、これまでのオフ会参加のためにかかった飛行機代やホテル代を合わせると20〜30万円程度は使っています。
投資家仲間から紹介していただいた投資で得た収入は、実はかかった飛行機代やホテル代にも及ばないのですが、海外旅行をしたという体験で元本は回収できていますので、収入分はまるまるリターンとすることができたわけです。
私のように海外旅行から実際の投資に結びつくようなことがなくても、たとえば、海外旅行の経験をブログに書いて、そこから収入がわずかでも得られれば、それは確実にリターンとなります。
ブログで収入が得られなくても、自身の本業で海外旅行の経験が活かせるかもしれませんし、それが昇進・昇給につながる可能性もあると思います。
樺沢先生は「自己投資は絶対にあなたを裏切りません」と言い切っています。
一時的にはお金が出ていくだけでリターンを得ている実感がないこともありますが、自己投資で得られた体験は間違えなく将来の自分をかたちづくっていくのだと、この本を読んであらためて気づくことができました。
結局のところ、お金の不安を取り除くということは、お金を増やすということだけにとどまらず、より「豊かな自分」になっていくということなのでしょう。
そして、「豊かさ」というのは、自分が保有している貨幣量だけでは測ることができない、自分がどんな行動をしてきたかということで決まっていくのだろうということを、この感想文を書くことにより気づくことができました。
樺沢先生が語る「投資術」に最初は期待し、自己投資によるリターンをファイナンシャルプランナーらしく数値で表現したりもしましたが、最後はやはり「行動というアウトプットでしか自己成長はしない」という結論に落ち着いたところで、この感想文を締めくくることといたします。
最後までお読みいただきありがとうございます。